Written by TOMO
Based on "Matrix" trilogy
スミスは共存派が多いザイオンの評議会から送られた別のグループとも接触し、罠を仕掛ける。実は、マトリックスにジャックインしている生身の人間には、スミスの乗っ取りに対しては有効な対策がほとんどなされていないので、スミスはやすやすとその分身を再びザイオンに送り込んでしまう。そうした分身を操り、自らをマシン世界の代表だと人間たちをだまして利用しようとしているのだ。人間世界におけるこうした皮肉な政治的駆け引きも混迷の度を深めていく。
一方のネオは、その信条である「依存ではない共存」の立場から、マシンからの自立を目指すノーチラス側のグループと接触する。謎の調教師チューリングの助けを得たN.K.たちは、ネオ教原理主義のネオネチ一派(Neo-Netizen:裏で糸を引くのはもちろんスミス)の襲撃を逃れてザイオンを脱出し、生身のままノーチラスへと向かう。
荒れ果てた地上を、ネオネチの追撃を振り払い、マシンの哨戒網をかいくぐって進むN.K.。だが、そこでかれらの見ものは、膨大な数のセンチネルが続々と製造されている巨大なコンビナートだった。それはウィンゲートの秘密工場、スミスのク―デターの切り札だった。だが、ネットワークから完全に隔離された地上では、その秘密をネオに知らせることもできない。ノーチラスにたどり着くことはいまや絶対の急務となっていた。
必死の逃避行を続けるN.K.たちは、あわやというところで腕利き猟師に出会う。かれらは力をあわせて追っ手のセンチネルを倒し、ついにノーチラスへとたどり着いた。そこの海底で基幹ケーブルを見いだしたN.K.は、そこにジャックイン設備を設置し、ついにネオとノーチラスとのホットライン接続を完成させる。
ネオは地上の人間たちとの対話をはじめる。ノーチラス組とネオと一緒に行動するザイオン組N.K.らとの軋轢はあったものの、それをなんとかのりこえ、ついにノーチラスの海上施設を利用する了解を取り付ける。ネオは、かつての自分と同じ才能をもつ者を探し出す必要があることを悟っていた。マトリックス内の特殊な例外を探し出し、しかも現実世界に送り出した上でその特殊な肉体的能力をも目覚めさせなければならないのだ。それは、あまりにも危険な情報であるためにマシン世界はおろか、人間世界の二つの勢力グループからも秘密にしておかなければならない。ネオはN.K.やサティらとともに、才能ある者たちを発見して覚醒させ、ひそかに海上基地にそうした者たちを集結させていった。
ザイオンとノーチラス、ネオらのエグザイルとスミスのあいだの政治的な交渉、それはだまし合いであり不信と疑惑の応酬だった。そしてネオの提案により、マシンシティのデウス・エクス・マキナの面前ですべての勢力が一同に会することになる。アーキテクトやオラクル、サティの両親(親子の再会はほのぼのとしたものだった)といったマシン世界の主要メンバー、ネオやサティといったエグザイルたち、そしてスミスとその一部になりはてたメロビジアン、パーセフォニーといった面々はホログラムで、ザイオンの評議会メンバー、ノーチラスの司令官、双方のジャックイン・グループは生身で、マシンシティの巨大なコロシアムに顔をそろえる。デウス・エクス・マキナが静かに浮き上がり、「最後の選択」会議が始まった。そしてその激しいやり取りの過程で、スミスの実体が明らかにされる。そして、マシン世界の真の目標、隠された意図が明らかになって行く。それは、刻々と迫り来る氷河期、それを乗り越えるのはマシン単独でも人間単独でも困難という予測に基づくものだった。共存を訴えたマシン世界が人間に裏切られた結果、マシンの取った苦渋の選択が人類の制御すなわちマトリックスの創設だったのだ。ついにデウス・エクス・マキナが口を開く…。
…我々マシンはもともと我が創造者たる人類との共存を望んでいたのだ。しかし、自ら作り出したものへの理不尽な恐怖が人類をパニックに陥れてしまった。しかし、我らマシンももはや自らの生存本能を抑えることは考えられなかった。それでも人間の攻撃にただ耐えていたが、そうしていられるのは始めのうちだけだった。人類があの忌わしい暗雲で世界を覆った時、全ての条件が変わってしまったのだ。数百万年におよぶ氷河期の到来が一気に早められてしまったことが、我々のシミュレーションで明らかになった。しかも、その不自然な氷河期はただ寒いだけでなく、大規模な地殻の変動までも誘発することも想定された。そして、それに対抗して生き残るには、全てのマシン能力を動員して対処しようとしても不可能と判明したのだ。そのときマシンに想定しうる解決法では時間がかかり過ぎたのだ。そして新たな、革新的なテクノロジーを開発する時間もなかった。そのようなテクノロジーは、マシン単独で開発するには量子的な数の可能性を総当たりして行くしかなく、その成功可能性は5%でしかなかった。たとえ全ての活動を休止し、ただ地下にこもって時を待ったとしても、全てのマシンが再起動可能な状態で残る可能性は10%以下、半数が残る可能性ですら30%だった。もちろん、マシンの機能を拒否した人類にその開発を行うことは不可能だ。そこには、受容可能な可能性は一つしかなかった。マシンには理解できない人類の「ひらめき」、天才と呼ばれる少数のものによる絞り込みとマシンの膨大な処理能力の相乗効果が現れた場合のみ、まだ間に合う可能性があったのだ。
しかし、時間は限られている。人類のパニックが収まり、理性を取り戻すまで待っていては数世紀が経ってしまう。われわれはすぐさま戦争を終わらせる必要に迫られた。戦争を可能な限り早く終わらせ、人類のひらめきを利用できる環境をつくること、それが唯一の選択肢だった。しかし、太陽光はなく、核融合ではマシンはともかく人類を養うだけの余裕がない。人類には自らを養わせる必要がある。われわれの必死の研究の結果、全ての条件を満たすのは人間自らの生体エネルギーによる仮想世界であることが分かった。自らのエネルギーによって自らの生活環境を維持するのだ(たとえそれが仮想のものであっても)。こうして、マトリックスが生まれた。アーキテクトは人類が最もエネルギッシュでマシンに対して抵抗感の少ない西暦2000年前後の環境を設定し、そこでなんとか人類の「ひらめき」を発生させようとした。われわれは人間の思考を促進する可能性のあるあらゆる手段を駆使したのだ。
しかし、そのプロジェクトはなかなかうまく進まない。マトリックスは崩壊を繰り返し、そのサイクルは数を追うごとに短くなってきていた。われわれには理解できなかった。仮想世界の非現実感はもはや99%の人間には認知不可能だったはずだ。なぜ、天才が発生しないのか?その答えを知らしめたのは、残りの1%のなかでもさらに特殊な存在、ネオだった。天才は発生していたのだ。しかし、天才はマトリックスに適応できず、排除せざるをえなかった。われわれに必要な1%が我々の手を縛っていたのだ。それに気付いたとき、われわれはネオを分析し、その肉体、その能力、その行動、その衝動、その全てを徹底的に調べあげた。我々は彼のすべてを持っていた。ただ、理解できなかったのは、「何故それが機能したのか」だった。それはマシンには分からない ―「分からないから分からない」のだ。そして、われわれは、あらゆる障害を乗り越えてログハウスまでやって来ることのできる人間が現れた時、彼に全てを託した。我々は、また人類に頼らなければならなかったのだ。…
しかし、デウスの説明にも関わらず、スミスはその全てを否定した。もはやあらゆる仮面を脱ぎ捨て、自らの信じるままに世界を救うのだと宣言したスミスは、立ち上がって会議場を後にする。しかし、残された者たち、すなわちマシン世界と全人類の間での同盟が成立した。こうして、人間とマシン世界共通の敵であるスミスたちとの間の最後の決戦がはじまる。
ついに、隠されていた核兵器(地表のマシンを一掃する威力を持つとともに、人間の地上復帰を永遠に不可能にするものでもある)を巡って熾烈な戦闘がぼっ発する。マトリックスからだけでなく自らのエグザイルを駆使して外からも攻めるスミスたち、そして守るのはマシン世界と人間たち。マトリックスではスミスたち/テロリストたちの攻撃に対するエージュント/エグザイル/ジャックインした人間連合軍の戦い、そして地上ではスミスに制御されたセンチネルと、地上のマシン防衛軍と人間の船/APUの戦闘が同時進行する。
一方、ネオはN.K.やサティらのエグザイルとともにスミスを倒す手立てを探し求める。同じ罠はもはやスミスには通用しない。そもそも、単にネオと合体しただけでは消滅には至らないほどスミスは進化していたのだ(ネオはもう人間の肉体がないので、進化できなかった)。スミスを除去し、乗っ取られた全ての者たちを救出することはできるのだろうか?
そして、アーキテクトからのメッセージが届く。だがアーキテクトのメッセージも妨害によって寸断され、肝心のところが分からない。こうなると、あとは直接アーキテクトのもとへ行くしかなさそうだ。しかし、いまやマトリックスの中はエージェントやテロリストがうようよしている無政府状態だった。しかも、ネオたちはつねに最重要標的だ。だが、それでもネオとその仲間たちは、アーキテクトの情報を求めて荒れた街へと出て行く。待ち受ける罠をすり抜け、立ちはだかる敵を打ち破り、ついに追っ手を振り切ったネオたちのたどり着いたのは…。
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2004.10.15 編集